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OCEANS TALK with Muneharu Yamaura Part 2

PLAYERS : MASAKI HARADA

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原田 正規
MHASAKI HARADA

 

OCEANS TALK
with Muneharu Yamaura
Part 2

 

オーシャンズ※1の仲間であり、ともにSリーグマスターズツアーをまわる戦友、山浦 宗治とあらためて話したサーフィンのこと。そして、一緒に海へ。ふたりのサーフセッションをムービーでお届け。

 

※ 2008年に結成。メンバーは原田 正規、吉川共久、山本 茂、山浦 宗治、山田 弘一、市東 重明、友重 達郎、遠田 真央という8名のプロサーファーたち。

 

文:高橋 淳
写真、動画:飯田 健二

 

Part1、山浦 宗治のプロフィールはこちら>

原田 正規(以下、MH):オーシャンズのメンバーのなかで、ムネくんはJPSAシニアツアー(現Sリーグマスターズツアー)に最初にエントリーしたよね。どうして出ようと思ったの?
山浦 宗治(以下、MY):やっぱり、いつまでもうまくなりたいから。
MH:その気持ちはみんな一緒なんだね。

MY:目的があると、それに向かってがんばれる。シニアプロツアーができたときに「すごい場ができたな」って純粋に思った。いろんなうまいサーファーたちが集まるJPSAの大会は、思い入れが強かった場所だから。
MH:おれが参戦する前に、ムネくんが出てることを知ったときはうれしかった。「大手企業で働いているのに出るなんて、今も変わらずサーフィンが好きなんだな」って。変な思いはまったくなくて、シンプルに尊敬できる。「うまくなりたい」っていう気持ちは純粋だよね。
MY:この歳になって、あらためてそう思う。自分の原点に立って次のイメージを膨らませていく。それってすごくいいエネルギーだよ。

MH:ムネくんは今50歳。サーフィンをやめない理由は?
MY:サーフィンは自分の人生のなかですごくいいバロメーターになっているから、いつまでも続けていきたい。「サーフィンしたいけど、今はできない」っていうモヤモヤした気持ちになることも大事だと思っていて。
MH:サーファーなら誰もが感じたことがあるジレンマだね。
MY:自分が執着しているものだからこそ、本当に正しい選択を迫られるときがある。サーフィンはそんなシチュエーションを与えてくれる。「サーフィンをしない」ことがいい選択のときもある。だけど、なるべくサーフィンができるような環境に持っていくためにはどうしたらいいかをつねに考えている。真剣になれるからこそ、人生におけるバロメーターになっていく。
MH:仮に、サーフィンがない人生を考えると?
MY:張り合いがなくなるよね。自分にとって、サーフィンほどいい執着心を持たせてくれるものをほかに探すことはむずかしい。執着が弱かったら、やらない選択をとることはかんたん。だけど強い執着があるなかで、あえて「今はサーフィンをやめておこう」と決断できるかどうか。そこが成長のポイントになる。自分なりの勝手な解釈だけどね。

MH:プロサーファーの現役時代から紆余曲折あって今のライフスタイルに行きついているけれど、現状に満足してる?
MY:満足度は50パーセント。向上心の部分が残りの50パーセント。これはいつまでも消えないと思うんだけど、さっきも言ったように、やっぱりサーフィンがうまくなりたい。友だちとサーフセッションもしたい。
MH:まだまだ行きたいという気持ちがあるとともに、満たされているということだね。
MY:そう。そうしていろいろ考えて行きつく思いは、月並みな言い方になっちゃうけれど「感謝」。悪いことにもいいことにも感謝していくことが人生のなかで大事だなって思って。そんな気持ちになれるということは、今の自分は幸せなんだろうなって思う。

MH:最近とくに心がけていることはある?
MY:海に入ったときにあいさつしている。波長が合うと、ぜんぜん知らない人でも会話が弾むのがおもしろくて。
MH:そういう人いる!
MY:ある日、同い年くらいの見知らぬ人とあいさつをしたら、「僕はね、サーフィンうまくなりたいんですよ!」っていきなり全力で来た。「直角のオフザリップがしたいんです!そのために、今すごくがんばってるんです!」って。
MH:いくつくらいの人?
MY:56歳だった。53歳でサーフィンを始めたらしい。その人のサーフィンを見たら、3年間でよくここまでがんばったなって感じで、並々ならぬ努力が垣間見えた。それから「一緒にうまくなりましょうよ!」なんて言われて、「僕もがんばります」みたいな話になって(笑)。そうやっていろんな人のサーフストーリーを知ることがおもしろい。

MY:サーファーって、本来はフレンドリーな精神を持っているでしょ?
MH:全世界共通だよね。
MY:今こそ、サーファーがいいバイブレーションを波及させていくときなんじゃないかと思って。
MH:ある意味、この偏ったって社会でね。ぜんぜん知らない人に「今のライデイングよかったね!」って声かけたりね。
MY:そう。その声がけひとつで、その人は「今日はいい日だった」と思える。そして「明日もがんばろう」って思えるはず。そういう、サーファーが持っているすごい力をどんどん広めていけたらいい。

MH:最後の質問。ムネくんは、プロサーファーになってよかった?
MY:すごくよかった。「プロサーファー」という肩書はひとつのプライオリティだから。
MH:みんながみんななれるわけじゃない。
MY:そして、そのプライオリティを持ちながらも、自分のなかでそれをなくしていくことでまた成長できる。
MH:プロサーファーとしての経験が人生の基盤になったんだね。だからこそ、初心に帰れる。
MY:うん。そうして今は、ただの「自分」としてちゃんと生きていけるようになった。僕にとって、プロサーファーになった意味はそういうものだったのかな。●

POSTED : 2024-09-13