PLAYERS : MASAKI HARADA
TOP STORY OCEANS TALK and SURF SESSION with Tomohisa Yoshikawa Part 2
原田 正規
MASAKI HARADA
OCEANS TALK and SURF SESSION
with Tomohisa Yoshikawa
Part 2
プロサーファー仲間、ヨッシーこと吉川 共久とのトーク&サーフセッション。Part.2はサーフボード談義、ヨッシーが広める千葉・一宮発のビーチカルチャーについて。そして、ある午後に撮影したふたりのサーフィンをムービーで紹介。
文:高橋 淳
写真、動画:飯田 健二
原田 正規(以下、MH):ヨッシーのサーフボードに入っているロゴ、「ONE TRACK LINE(ワントラックライン)」はヨッシーモデルっていうこと?
吉川 共久(以下、TY):そう。ワントラックラインはおれのコンセプトボード。CHPの原型となったブランド、サンウェーブのなかで、シェイパーの山崎 市朗さんに自分の思いをかたちにしてもらってる。これはシルキーっていうモデル。
MH:けっこう重いね。
TY:リッピングはしないよ。腰折れちゃう。クルージング仕様。多くのサーファーが「楽に楽しめて、気持ちよくなれる」というのがコンセプト。
MH:こういうボードに乗るとちょっと優雅な気分になれるよね。
TY:ゆとりができるよね。
MH:でもレトロすぎず、新しい感じがする。
TY:うん。どんくさくない。これは2~3本テストしてできたかたち。市朗さんのイメージでまずつくってもらって、そこから自分の希望を出して、ちょっとずつチューニングしていった。原型は7’2″(約218.4センチ)のピンテール。操作性を上げるためにテールを割って、長さを6’6″(約198.1センチ)にした。
MH:わかる。今日持ってきたおれのボードは6’5″(約195.6センチ)。それくらいがちょうどいい。このへん(千葉・一宮界隈)で乗るには、7フィート(約213.3センチ)超えちゃうとちょっと長すぎるよね。
MH:おれがシェイプしたボードも見て。腰くらいの波でもぜんぜん走る。
TY:細いね。
MH:18 7/8″(約47.9センチ)。
TY:「すごい動くね~」っていう、正規のサーフィンのイメージはまったく変わらない。おもしろいね、デザインが。
MH:フィンも自分で削った。フィンランドバーチの合板を取り寄せて、自分でカットして。軽くて、木目がきれいに出るから見た目もいい。
TY:おれのボードとまったく違う。「真逆」っていうくらい。
MH:おれのは重さがない。ショートボードの延長というか。
TY:新しいね。
MH:サーフボードは、いろいろあっていいと思うんだよね。自分のなかにデザインのイメージがある。それをシェイパーさんに頼んできたんだけど、うまくできてこなかった。相手もプロの職人だから、言いづらい部分もある。でも自分でシェイプすると、頭のなかの100パーセントをかたちにできるからおもしろい。
TY:それがすごいよね。かたちにできるっていうのが。
MH:かんたんだよ。
TY:おれはそこはプロにおまかせ。10年後はどういう気持ちになっているかわからないけど、今は本職のシェイパーさんに頼っちゃう。ちゃんとイメージをかたちにしてもらえる環境がすごくありがたい。
MH:ライダーとシェイパーのリレーションシップ。それもひとつのかたちなんだよね。でも、おれってけっこう型破りじゃん。
TY:そう。だから正規はアーティストなんだよ。イメージをかたちにできるし、体を使って表現もできるから、「正規」っていうブランドができる。
MH:ヨッシーの最近のライフスタイルについて聞かせて。
TY:今はサーフィンはほどほど。自分の意思で「この波やりたい」ってサーフィンすることは本当に少なくなってる。
MH:そうなんだね。
TY:その代わり、ここで交流の場としてカフェ(アトランティックコーヒースタンド)をやることで、より広い視野でいろんな人を受け入れられるようになった。おかげで気持ちも体も安定している。朝6時くらいからお昼過ぎまでお店をやって、午後にサーフィンレッスンを週2~3回やってる。そのあと波がよければ、軽く整える。
TY:お客さんとそういう信頼関係が築けたのはやっぱりサーフィンのおかげだし、一宮だからできたことだと思う。すごく今いい感じ。
MH:この先、さらにどんなことをしていきたい?
TY:お金を貯めて、もう少し海外に行く時間もつくれたらいいなと思ってる。また仲間内でサーフトリップに行けたらいいなという思いは、いつでも心に持っている。だから今、がんばって働いている。でもそんなことを言っていられるのも、家族とスポンサーの理解があってのこと。つねに感謝しながらやってる。
MH:そうだよね。この職業はスポンサーなしでは生きていけないからね。
TY:プロサーファーにつくスポンサーは、今やサーフィンのブランドだけじゃない。若い子にもいろんな可能性があると思う。
MH:おれたちの現役時代と違って、いろんな企業がサーフィンに興味を持ってくれているよね。
TY:そう。よくよく聞くと、おれたちと同年代が社長だったりしてね。サーファーの子どもや選手に対して、社会的に協力したいという気持ちを持っている人たちがすごく増えてる。だから、ひと昔前よりはサーフィンで生きていける可能性が高まっているんじゃないかな。これまでのサーフィン業界は、選手たちをちゃんとした成人として社会に送り出せるような教育をあまりしてこなかったと思う。
MH:サーフィンだけやりっぱなしだったというか、そこには目を向けてなかったよね。
TY:若いころのおれらはサーフィンしかしていなかった。「サーフィンを軸にしながら、いろんなやり方があるんだよ。こんなことも企業のなかでできるし、こういう仕事も紹介できるよ」っていう教育を受けてこなかった。あの時代と、今のサーフィンを取り巻く世界はかなり違う。そういった意味でも、これからが楽しみだよね。
MH:まさにここは、そんな人と人がつながる場でもあるわけだもんね。
TY:そう。サーフショップではなくて、サーフィンのことを伝えられる場をつくりたくて。
MH:アトランティックでは写真やアートの展示もよくやっているけど。
TY:身近にフォトグラファーやアーティストがたくさんいるからね。海沿いに来て、サーフィンやにアートを感じられる場所に気軽に立ち寄ってほしい。海辺のカフェにさらっと寄って、刺激をもらって海に向かうとか、家に帰るといった文化が日本にはあまりない。アメリカとかオーストラリアにはあたりまえのようにあるのにね。だからおれはここを始めた。「朝型のコーヒー文化、サーフィンやアートのある暮らしを少しでも知ってもらえる場所にしたい」っていう気持ちでお店をやってる。
MH:人のつながりでお店が育って、輪が広がっていく。
TY:そういう文化がここから広がっていけばいいかなと思って。
MH:昔からブレないよね。積み重ねていることが。●
POSTED : 2024-07-25