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牛越 峰統に聞く Part 2

PLAYERS : MASAKI HARADA

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原田 正規
MASAKI HARADA

 

牛越 峰統に聞く

Part 2

JPSAシニアツアー最終戦直前。戦う選手ふたりの会話とそれぞれのスタイル。

 

文:高橋 淳
写真:飯田 健二

原田 正規(以下、MH):JPSAシニアツアー※1について、あらためてお聞かせください。
牛越 峰統(以下、MU):往年のプロサーファーたちが今どんな姿で、どのように今もサーフィンを続けているのかを証明する場です。かつての試合と同じシチュエーションで選手たちが戦う。それを1戦、2戦とやってくうちに支持が高まってきて、眠っていたシニアプロサーファーたちが起きてきた感じですね。
MH:出場するようになって、日本全国の同年代のサーファーたちへの影響力の大きさを感じました。
MU:同世代のサーファーの方から『おれもひさしぶりにショートボードに乗ったよ』という声を聞きました。だから、ただ自己満足でやってるだけじゃないんだなと実感してます。
MH:種子島と新島の2戦を終え、牛越さんは現在ランキング1位です。ふだんはどんなペースでサーフィンをしていますか?
MU:いそがしい言葉になっちゃうけれど、やれるときにやってます。
MH:週にどれくらいですか?
MU:1日もできない週もあるし、ポンと予定が数日空いて、連日ゆっくり朝からサーフィンをすることもあります。やり貯めるみたいな感じかな。本当はサーフィンのやり貯めはできないんだけどね。だからどんなにいそがしくても、ちょっとだけでもやるようにしてます。やらないと、どんどん離れていっちゃうんで。

 

 

※1 日本プロサーフィン連盟(JPSA)が主催する、45歳〜59歳の公認プロサーファーを対象としたツアー戦。2023年は種子島、新島、宮崎にて開催。全3戦の総合ポイントでグランドチャンピオンを決定する。

MH:牛越さんは新島戦で優勝しました。勝利の秘訣はなんですか?
MU:選手はみんなそうだと思いますが、ゼッケンを着て海に入るときにスイッチを入れるんですよ。そのときに、行き先がわかっていれば勝てる。どの波に乗るのか、手前の波を狙うのか、いつプライオリティ使うのか、この相手の横に寄らないとか、いろんなことを考えて作戦を立てる。もちろんすべて想定どおりにはならないです。やっぱり運まかせになる部分もある。でも、海に入る前にそれなりの準備をしています。
MH:シュミレーションが大事だと。
MU:こういうふうに勝てたらいいなっていう展開をイメージしてます。試合はそれが楽しい。単純に「やってやる!」じゃないですよね。「これ決まったらいいんだよな」とか「おれのところにあの波が来たら……」といった自分のイメージを信じて戦っている。乗れたらラッキーだけど、乗れないときのためのことも考える。保険はかけてますよね。
MH:そんなふうに考えてるんですね。
MU:相手に関してはあまり気にしないです。そこを考えすぎちゃうと緊張しちゃうんで。新島では正規とも試合をしたけれど、当たるとわかったときには「乗られたらいやだな」とかネガティブな考えが頭をよぎるんですよね。でもそうじゃなくて、「いい波に乗れたらいいじゃない。おたがいに」って切り替えられたときは勝つ。自分の場合は「おれが乗ってやる」ってやったときはたいてい負けてます。
MH:おれは「やってやる」っていう気持ちでしたね。自信はあって、「波が来れば勝てる」って。敗因は、サーフボードが少し小さかったんですよ。そのミスが大きかった。
MU:正規らしくていいじゃないですか。原因が早くわかったならいい。勝ち方は人それぞれですから。

MH:10月23日から始まる宮崎戦に向けて、どんな準備をしてますか?
MU:もう1か月を切ってるんですが※2、あまり準備できてないんですよ。もっと走り込んだり、パドリングしたり、トレーニングしたい気持ちはもちろんありますよね。それで疲れてるせいにしちゃう。「疲れてるのに変にやって体痛めたらよくないから」とかね。
MH:でも、そう思えるのはさすがですね。おれは無理にやって、ケガしちゃったりします。
MU:まずはゼッケンをこの手でしっかり取れるようにすることを考えています。コロナやインフルエンザのことだってありますからね。会場は宮崎です。飛行機に乗れなかったらアウトなわけですよ。現地で具合悪くなったらみんなにも迷惑がかかる。だからなるべく密室に行かないように気をつけたり、できることはありますよね。
MH:すごいですね。おれは行けることが前提になってる。
MU:日常生活、いつ何があるかわかんないですから。とはいえ、そんなことばかり考えてたら生きていけないですけどね。
MH:おれはあまり考えないようにしてます。試合だから、1コケもありえるわけだし。ただやっぱり「いいサーフィンしたい」という欲も少しはあります。

 

 

※2 インタビュー当日は2023年9月27日。

MU:もちろん欲はありますよ。宮崎戦は毎年の楽しみですが、千葉から遠く九州へ行って戦うわけですから。今年の宮崎のシニアプロは参加選手が少し増えそうです。これまでは2回勝てばファイナル、3回勝てば優勝でした。今回はもう1回勝たなきゃ優勝できないでしょうね。
MH:牛越さんはグランドチャンピオンがかかってます。
MU:去年の宮崎戦はちょっと残念でした。ファイナルまで行ったんですが、そこで4位になってしまってグランドチャンピオンを逃したんですよ。3位だったら獲れたのに。
MH:ファイナル前にそのことを知ってたんですか?
MU:いや、3位でよかったとは思っていませんでした。誰かに「何位になったらグラチャン獲れるか教えときましょうか?」って聞かれたけれど、「いい」って答えたのを覚えてます。そういうちょっとしたことがダメでした。だから、今年は負けないようにしたい。
MH:各々背負ってるものがありますからね。
MU:シニアツアーは年々熱くなっています。

POSTED : 2023-10-20