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OCEANS TALK and SURF SESSION with Shigeaki Shito Part 2

PLAYERS : MASAKI HARADA

TOP STORY OCEANS TALK and SURF SESSION with Shigeaki Shito Part 2

原田 正規
MHASAKI HARADA

 

OCEANS TALK and SURF SESSION
with Shigeaki Shito
Part 2

 

市東重明とのトーク&サーフセッション。Part2の話題はより深く、プロサーファーふたりのサーフィンへのこだわりと生き方について。サーフシーンとともに語るインタビュームービーも必見。

 

文:高橋 淳
写真、動画:飯田 健二

 

Part 1、市東重明のプロフィールはこちら>

原田正規(以下、MH):シゲは生まれも育ちも片貝出身でしょ? 外に出ようと思ったことはある?
市東重明(以下、SS):ないな。でも、プロになる前となった直後は志田下でよくサーフィンしてた。
MH:勝浦のリーフでもやってたよね。えげつないの。
SS:やってた。でも最近はほとんど片貝でやっちゃうね。サーフィンできない日がない。南風ビュービューでも北風ビュービューでもできるし、クローズアウトしてもできるところがあるから。
MH:じゃあ、今まで地元以外で暮らしたいと思ったことはなかったんだね。
SS:ないね。出る必要がない。もしも地元に波がなかったら、やっぱ出たいんだろうな。

 

 

※ 波のサイズが大きすぎる、風が強すぎるなど、サーフィンに適さない危険なコンディション。

MH:今はこうやってお店もやって「地元の顔」というか、そういう世代になってきたわけじゃん。この先「こうしていきたいな」とかイメージはある?
SS:ないな。食ってければいい(笑)。片貝からは離れたくないよ。本当に愛してるし、ここの海も波も好きだし、土地柄も好きだから。最近は徐々にいい雰囲気の飲食店も増えてきたし、サーファーの移住も増えてきたよ。
MH:片貝もそうなんだね。
SS:本当にさ、サーフィンはライフスタイルだと思うよ。そして人とくらべないで、自分のスタイルや楽しみ方を貫く。
MH:それができればいちばんいいよね。

MH:シゲは選手現役だったころに何かやり残したことはある?
SS:ない。やり尽くした。
MH:自分のなかでベストを尽くしたんだ。
SS:トレーニングも必死でやったし、練習もたくさんやった。やることはやったかな。でもあのころの自分より、今のほうがサーフィンうまい気がするんだよ。波も理解できてるし、ボードも理解できてるしさ。この知識を当時欲しかったな。
MH:技術的なものもあるけど、歳をとってメンタルもよくなってるんだろうね。じゃあ、プロとしてはもうやりきったと。
SS:コンペはね。プロとしては、これからもかっこいいオヤジのスタイルっていうか、サーフィンライフというか、それをどうつくり上げていくかっていうところがテーマだよ。だから、サーフィンの技術は落としたくないよね。
MH:わかる。
SS:そこは永遠のテーマでさ。おれの場合は、ターンを突き詰めていきたい。人がおれのサーフィンを見て「今のよかったじゃん」って言ってくれても、自分のなかで納得いかないことがあったりするんだよね。「じつはちょっと板返すタイミングが遅かったんだ」とか「ちょっと引っかかって無理やりごまかしてんだよ」みたいなことがあるんだけど、全部パーフェクトに行きたい。きれいなターンで。

市東重明

MH:今日一緒にサーフィンして、いいと思ったよ。別にお世辞じゃなくて。「やってんな」っていうね。そこがやっぱりプロとしてぜったいにいちばんやりたいところだと思うんだよね。いくら年とっても「自分のサーフィンができてる」っていうのがね。 人に見られて「原田正規サーフィン終わったな」とか思われたくない。それも愛嬌あっていいのかもしれないけど(笑)
SS:まあ、今の現役の若い子とくらべるとエアーもそんなメイクできないしさ(笑)。でもターンに関しては、技術が上がってると思うんだよな。
MH:そういうところに「プロサーファー」っていうプライドがあるよね。選手としては引退してるけど、プロサーファーは引退してないっていうか。
SS:ぜんぜんしてない。
MH:つねに人にサーフィンを見せられる「プロサーファー 市東重明」がいるわけだね。
SS:終わりがないよ。ずっと極められないもん、サーフィンは。ケリー・スレーターだって「まだ極めてない」って言ってるんだからね。自分なりに何かあるんだろうね。
MH:ケリー・スレーターに「極めてない」って言われたら、ちょっときついね(笑)
SS:「死ぬまでサーフィンを追求しろ」ってことじゃない? それがテーマなんじゃない? 歳とってからもうまくなれるからね。
MH:そう。やってれば、ぜったいにサーフィンはうまくなれる。

原田正規

MH:「今後の市東重明」はどんなイメージ?
SS:なんだろうな…… 手探りだから。登る山決めてないからね。「あそこまで行きたい」とは思ってないからさ。つねに目の前の分岐を左右どっち行くかの勝負だから。
MH:シゲはサーフィン以外にもいろいろやってきたよね。ファッション誌とかいろんなメディアに出て「プロサーファー 市東重明」っていうのを世間に広めた。おれはそういうサーファーがすごく大切だと思うんだよね。もちろんサーフィンのスキルを持っていて、それだけじゃなくて社会に認められるサーファーが育ってきてほしいなっていう思いがある。自分にはできないから。そういう意味で、シゲはおれたちの世界からまた違う世界へアプローチしてた。でも基本的にサーフィン好きだから、またこうやってサーフィン一緒にできる。そういうシゲは、今も昔と変わってないね。
SS:ずっとやりたいようにやってるからね。そんなライフスタイル。

写真:SOUND OF SUNRISE

MH:おれは漠然とだけど、日本のいろんな波をサーチしたい。それにはどうするかと言ったら、サーフィンをもっとやって、人より抜きん出るサーフィンをするしか抜け道がないと思ってて。だから、どんなコンディションでもとりあえずサーフィンしてる。チャンスが来たときに、その波に乗れるか乗れないかだから。そうやって自分をずっとキープして……。でも、そのチャンスはいつなのかわからない。
SS:(笑)
MH:その前に死んじゃうかもしれないし。でも、それがおれのなかの永遠のテーマなのかな。今から世界とは思わない。でも日本だったら、未開の地を探せる。
SS:あるよ。
MH:そういう無人の場所ですごいサーフィンをしたいな。松岡慧斗を筆頭に、今の若い子たちがやってることはすばらしいと思う。昔は、彼らがやっているようなウェイブハントを『サーフィンワールド』っていう専門誌が発信してたけど、それを個人で発信していることは本当にすごいし、リスペクトできる。

SS:逆に言えば、今は自分で発信できちゃう時代だよね。
MH:でもそれには、経済的なものも含めて準備が必要で、体もつくっていかなきゃいけない。そんなかんたんじゃないからね。「波を当てる」っていうのも。
SS:一発じゃ無理だもんね。通って通って情報を得ていかないと。ローカルとも仲よくなってさ。そうじゃないと当てられないじゃん。
MH:そう。そして、それはサーファーにとってひとつの作品になるわけじゃん。波のコンディションが整って、カメラマンがいて、そこで決める一発があるっていう。それは毎回できることじゃなくて、年に一度あるかどうか。だからこそすごく価値がある。いろいろ考えても、自分がプロサーファーとしてこの歳でやりたいことはそれしかないんだよ。
SS:それはやるしかないね。
MH:きついんだけど、体が。ゼエゼエ言って「本当に行けるのかな?」って(笑)
SS:(笑)。その目標があるからがんばれてるんじゃない?

MH:でもサーフィンで死んでる人も多いじゃん。そこはやっぱり頭のなかに入れておかないとダメだと思ってる。
SS:だけど、海だったら死んでもいいね。変な死に方するくらいなら、波に巻かれて死んだほうがいい。
MH:そんな気持ちにサーファーとしての本質があるのかもね。
SS:つまり、つねに海のそばにいたいよ。●

POSTED : 2025-03-10