文:河上 竜平
エマがメイクしたバックサイド900(ナインハンドレッド)※1の動画をインスタグラムにアップした。わたしがiPhoneで撮ったラフなものにもかかわらず、たくさんのアカウントでシェアされて再生回数が56万回まで伸びた。いくつかの海外のウェブメディアからダイレクトメッセージで問い合わせがあった。オリンピックの公式インスタグラムでも紹介されるほどすごいことだったらしい。なかでも、ESPNから連絡が来たときはうれしかった。
ロサンゼルスのニュース番組からエマをオンラインでインタビューをしたいとの申し入れがあったのだが、残念ながら英語が話せないため、断念せざるを得なかった。やはり英語を使いこなせることはアドバンテージ。海外のスケートボードの動画もほぼ英語なので、吸収できることもさぞかし多いだろう。親子で勉強する必要があると痛感した。
もっとも驚いたのが、ABCニュース「グッド・モーニング・アメリカ」から動画を放映したいと依頼があったことだ。なにせ全米で放送されているチャンネルだ。担当者から「いつからスケボーをしているのか?」「メイクするまでどれぐらいかかったのか?」「エピソードがあれば教えて」といくつか質問をもらい、あとは「無加工の動画を送ってほしい」というリクエストにメールで応えるだけだったので助かった。
1999年にトニー・ホークがXゲームズ※2において史上初めて900という大技をさせたことは有名な話だ。その後、900を成功させたスケーターは多くはない。現役のスケーターでは現在14歳のギー・クーリがルーティンにかならず入れている。エマはギー・クーリの滑りにあこがれていて、彼の代表的なトリックである900を成功させたいと思っていた。ギー・クーリが何歳のときに900を成功させたのかをインスタグラムで調べていると、8歳の終わりごろであることが判明。それをエマに伝えると「7歳のあいだにぜったい成功させる」とチャレンジを決意したのだった。
「グッド・モーニング・アメリカ」で紹介されたときの見出しに「7-year-old skateboarder breaks half-pipe record Ema became the youngest person to ever complete a “900.”」とあったので、そこで初めて世界最年少で成功したのだと気づいた。
※1 空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転半させるトリック。
※2 さまざまなエクストリームスポーツを集めて夏と冬の年2回開催される世界最大級の競技大会。
日本で息子の練習風景を父親のiPhoneで撮影したものがABCニュースで全米に放送されるのだから驚きだ。あらためてスケートボードの神様トニー・ホークのシグネチャートリックのすごさを感じた
POSTED : 2023-06-16