文、写真:原田 正規
自分にとってサーフィンが軸としてあるわけだが、サーフィンだけを追い求めていた時代と、サーフボードをつくるという作業が加わった現在ではまったくモチベーションが変わったことを話したい。
サーフィンだけを追い求めていた時代、コンテストで結果を出すことと、いい波だけを捕まえていいランディングを映像、写真に残すという動きをプロの仕事として20年以上やれてきたことはありがたかった。だが家族ができ、サーフシーンの世代交代とともにその活動ができなくなってしまい、それでもサーフィンで食べていくためにサーフショップやボードメーカーをやったりと、紆余曲折しながら最終的にはサーフボードを自分でつくることになってしまった。これも最初は本意ではなく、シェイパーとの関係性が悪化した原因だった。
サーフィンだけを追い求めることで人とのトラブルなどいろいろとむずかしくなって、サーフィンする気にもなれない苦しい時期もあったが、自分でサーフボードをつくってサーフィンをするという誰にも邪魔されない時間を経験したときからまたサーフィンが楽しくなってきた。自分でデザインしたボードをつくって乗ることで、誰よりもサーフボードの性能がわかる。今までの経験が型になると思ったのだ。
ライダーとシェイパーというふたりの関係性もすばらしいと思う。乗り手とつくり手のつくり出すボードがいい結果を生めば、その影響は広がりを見せ、チームとしてより高みを目指すことになる。ただ人と人なので論争もなきにしもあらず。食い違う結果もともなう。わたしの場合はそこのジレンマに長年苦しんだ。
わたしが考えるサーフボードづくりは、自身の経験をもとにどうしたら大きな波をかんたんに乗れて、気持ちいいラインが描けるかなど、とても創造的で、より実践的に試すものだ。
ボードづくりだけとか、サーフィンだけとかではなく、問題をクリアするために自身でテストすることの有意義さが、わたしの日々サーフィンするモチベーションとなっている。
自分のイメージをかたちにしたサーフボードたち。一見奇抜に見える部分もあるかもしれないが、これらのデザインはプロサーファーとしてのわたしの経験にもとづいたもので、れっきとした意図がある。自作のサーフボードが海の上で想像どおりに機能したときの気分は何ものにも変え難い
POSTED : 2024-03-15