文、写真:原田 正規
サーフィンを始めて約33年が経つ。今まであらゆるサーフボードに乗ってきたが、特別おもしろいと言えるサーフボードを紹介したい。
それはサンディエゴフィッシュ。テールの形状が魚の尾びれそのもので、波の上で弧を描く「マニューバー」の動きが何より優れている。波のコンディションを問わず、緩い波でも掘れ上がった速い波でも抜群におもしろい。フィッシュしか乗らないというサーファーも少なくないほど人気のデザインだ。
カリフォルニアのサンディエゴでは昔から流派があるフィッシュ。スティーブ・リズが原型を考案してからスキップ・フライが現代のサンディエゴフィッシュに洗練させてきたという伝統がある。シェイプを始めたころ、わたしもフィッシュにハマり込み、すぐさまテンプレートをつくりシェイプに取り組んだ。
伝統的なサンディエゴフィッシュはいわばレトロモデル。重厚なグラッシングで仕上げるため、ボードの重さでスピードを得るという特長がある。一般のサーファーが乗っても驚くほど波を走るスピードが速い。だがわたしはあまり重いグラッシングは好みではない。あまりにもボードが重いと、スピードが出すぎてコントロールを失う場合があるからだ。自身でスピードをコントロールできるように、ある程度の重みを残しつつやや軽めに仕上げるのがわたしのつくるフィッシュである。フィンの素材、そしてツインフィン、クワッド(4本フィン)というセッティングの違いも含め、探究しながら現在もシェイプしている。
自身でつくったサーフボードを自分で試す。サーファーにとって、これほどおもしろいことはない。だからこそ、乗っては気づいた部分を改善し、デザインを完成させることに時間と労力は惜しまない。
やや軽く仕上げ、サーフボードの裏側に「ホールドエスケープ」と名づけた末広がりのコンケーブを入れてあるわたしのフィッシュ。レトロボードのクラシックで直線的なライン取りではなく、より波のカーブにフィットしたライン取りができるようにカスタムしている
POSTED : 2024-02-19