文、写真:河上 竜平
先日、1月27日にウィングラムカップ※1の第3戦が開催される秩父スケートパークまで遠征してきた。ふだんのエマは、いつもと違うパークにたまに行ったりするくらい。コンテストに向けた練習のための遠征は初めてだった。
メンバーは弟のヒイロと名古屋のスーパーキッズのアオくん。アオくんはエマの大親友であり、あこがれの存在。スキルがとても高く、パークもバーチカルもランプもこなす世界でも有名なスケーターだ。一緒に行動することで、ただの遠征ではなくなる。アオくんの滑りを間近で見ながら長い時間一緒に滑れることは、エマにとって大きな勉強になるからだ。
朝10時に神戸を出発。名古屋でアオくんをピックアップし、秩父に到着したのは18時ごろだった。3人は長距離の移動だったにもかかわらず、到着してすぐ元気に滑り出す。エマはこのパークについて「ジースケートパークよりエアーの着地がボトム側になるのと、(滑走)面が違うからかスピードが乗らない。合わせていくわ」と分析していた。初日は、初めてのバーチカルの感触をつかむために軽くエアーをする程度で終了。しかし子どもたちは疲れ知らず。遠征が楽しくてしかたないようで、宿泊先に着いてからも夜遅くまで3人で遊びつづけていた。
2日目は昼から練習をスタート。昨日に引き続きエアーでバーチカルの感触を確かめながら、少しずつトリックの練習も行った。3日目からはルーティンの練習もすることに。そして、ジースケートパーク以外ではやったことがない900※2をやってみることにした。ほかのトリックやエアーをこなして秩父スケートパークバーチカルに慣れてきていたし、今や900は精度が高いトリックだったので心配はしていなかった。そしてやはり2~3本試しに調整してからすぐにメイクした。ホームパークで滑り込み、精度を上げる重要性を実感した瞬間だった。今回の合宿で、ジースケートパークのコンテストで行ったルーティンも難なく乗れることも確認できた。いろいろなスケートパークを体験することでこそ、精度の高いトリックを臨機応変に調整する力を養える。
こうして秩父スケートパークでの合宿は大成功に終わった。コンテストまではまだ少し期間がある。本番のルーティンは今の案と変わるかもしれない。エマがずっとあこがれているショーン・ホワイトのコンビネーションが最近成功して喜んでいたので、それをやると言うかもしれない。エマには「コンテストで勝つことも大事だけれど、決まったルーティンだけじゃなく、心から自分がやりたいこと、むずかしいと思うことにチャレンジするように」と日頃から伝えている。たとえコンテストで使うトリックじゃなくても、やりたいようにやればいい。コンテストで勝つために同じルーティンやトリックばかり繰り返していてもおもしろくない。そんなやり方では、スケートボードの大きな魅力である新鮮な楽しさが増えないのだ。エマの年齢や成長を考えると、なおさらそんなことを思う。
※1 日本スケートボーディング連盟(JSF)主催のツアー戦。全3戦のうち点数の高い2戦の合計点の上位者が、ワールドスケート国際連盟が開催するワールドスケートゲームズに出場できる。
※2 空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転半させるトリック。
エマ、ヒイロ、そしてアオくん。コンテストという目標に向かって努力しながらも、凝り固まらずに、トリックやコンビネーションなどに対してクリエイティブな考え方を養ってほしい。そのためにも遠くのパークへ行ったり、友だちと滑って楽しい時間を過ごすことは大切だ
今回の遠征でいちばん滑っていたのはヒイロだ。ストイックな性格で、いやなことはやらないが、自分で決めたことはあきらめずにやりつづける。遠征が楽しかったようで「また秩父スケートパークに行きたい!」と言っていた
POSTED : 2023-12-22