文、写真:河上 竜平
エマにとってのホーム、ジースケートパークでの初めてコンテストが目前に迫ってきた。
そんなときにもかかわらず、エマは流行りの風邪をひいてしまった。そのため数日間休養。復帰してからすぐはトリックの調子も悪かった。そこでまずは勘を取り戻すために、コンテストのルーティンの練習ではなく、ひとつひとつのトリックを見直す作業を行った。風邪をひかないことがいちばんだが、コンテスト直前ではなかったことは不幸中の幸い。あとは調子を上げていくだけだ。
エマはトリックの精度や成功率が下がったことにいらだっていた。何よりも楽しみにしていた先週のショーで滑れなかったことに対しても悔しがっていたが、これもいい経験になるだろう。
コンテスト4日前にようやくルーティン練習を再開できるレベルまで調子が戻ってきた。場合によっては、メイク率が高いトリックを増やした構成に変更することも視野に入れなければならない。とにかく集中して、当日までにどこまで調子を上げられるかがポイントだった。
コンテストが近づくにつれて、ほかのエリアからもスケーターがやってきはじめた。和気あいあいとした雰囲気のなかにもピリついた空気が流れる。オリンピックなどでスケートボードは讃え合う競技として取り上げられているが、コンテストは勝敗をつけるものだ。勝負をしている以上、負けると悔しいし、勝つとうれしい。そんなことが、スケーター同士の練習にも垣間見える。
これまでコンテストに出ることがあまりなかったエマは、勝ちにいくことよりも、より高度なトリックへのチャレンジを目標にしていた。だがやはり、ほかのエリアから来たスケーターがホームパークで自分よりすごいことをしているところを見ると、リスペクトしてはいるが、多少の悔しさも心にあるように見えた。この感情は、さらなる上達を目指し、自分を奮い立たせるためにとても大切だと思う。カルチャーの側面が強いスケートボードとはいえ、競技である以上、勝敗の勝ちにおいてはほかの競技スポーツと同じだ。
このような環境のおかげか、大会前日には完璧とは言わないまでもルーティンのメイク率も上がってきた。そして、大会の詳細が前日に発表。今回の大会では、予選と決勝が行われるという。エマと話し合った結果、予選では精度が高いトリックをメインにしたルーティンにして、決勝では、メイク率はそこまで高くないが、エマがもっとも見せたいルーティンにチャレンジすることにした。
エマが出場するエキスパートクラスの一覧も発表されたが、案の定、最年少だった。何はともあれ、初めてのホームパークのコンテストで練習してきた成果を全力で出しきって、楽しんでもらいたい。
フリップボディバリアル540※を成功させたい一心で練習を重ねるエマ。いつもは数人のバーチカルに、日本各地からスケーターがやってきたおかげでいちだんと熱が入る
※ 空中でボードを縦に1回転、お腹側へ1回転させながら、体を1回転半させるトリック。
大会前日の夜ごはん。友だちの哲平くん(中央)と一緒に。オフの部分も大会の大きな楽しみだ
POSTED : 2023-11-27