文:原田 正規
写真:飯田 健二
19歳のときに初めてタトゥーを入れた。場所はハワイだ。当時地元で遊んでいた先輩がハーレーに乗っていて、自分もいつかはハーレーに乗りたいと思っていた。その思いを込めて、左腕にハーレーに乗った骸骨の絵柄を入れた。
次に入れたのはハワイから帰国後、少し経ってからのこと。そのころアルバイトをさせてもらっていたサーフショップの仕入れの手伝いでカリフォルニアに行ったときだった。友人と一緒にベニスビーチで入れた絵柄はありきたりな龍虎。その後、友人が彫り師に弟子入りしたことをきっかけに、わたしのタトゥーは増えていく。右腕に自分のシグネチャー、正規の「正」の字の上に“NEVER MIND”というお気に入りのフレーズをすぐに入れ、続いて両親指の付け根に白星と黒星、左腕に正規の「正」の上に“EVEN”という文字を入れた。
それを機に、気分よく町で遊んだり、ケンカにもよく巻き込まれたりしながら、不良じみたスタイルにあこがれていた。20代後半には、友人にデザインしてもらったサーフボードメーカーのロゴを背中の中心に入れ、そのまわりに波、下に蓮の花を一面に入れた。その背中に入れたタトゥーのモチーフとなったのは、当時大好きだったソウルフライというヘビーメタルバンドのアルバムジャケットのデザインだ。わたしのタトゥーは、影響を受けた音楽やバイク、陰と陽などの意味合いをしめす自分の気持ちを表現した内容が刻まれている。
もう20年近くタトゥーは入れてない。当時のことを思い返すと、自分の弱さを埋める薬、もしくはそのシーンに登りつめるために刻んできた勲章のようなものだった。タトゥーを入れたときには、不思議と何かを成し遂げてきたことが今も記憶に残っている。
ふと「またタトゥーを入れたいな」と思うときがあるが、今は家族と温泉に入りたいという気持ちのほうが勝る。気兼ねなく温泉に入れるように、目隠し用のババシャツでも買おうか迷走中だ。
ソウルフライのバンド名を冠した名曲「ソウルフライ」。ぜひ聴いてみてほしい
POSTED : 2023-11-02