文:河上 竜平
10月1日、兵庫県スポーツ協会が主催するマリン&アーバンスポーツフェスティバル、海体祭が開催された。海体祭ではヨットレースやインラインスケートの体験会、そしてバーチカルランプでのショーが行われる。
インラインスケートの世界王者である安床 武士さんに声を掛けていただき、エマはチームグッドスケートの一員としてショーに参加させてもらった。メンバーは9月に行われた夏フェス、ハジケテマザレ・フェスティバル2023(以下、ハジケテマザレ)※1のときとほぼ同じで、ホームであるジースケートパークでいつも一緒に滑っている気心が知れた人たちばかり。だからエマはリラックスしていて、海体祭には初参加だったが、その日が来るのをとても楽しみにしていた。
午前と午後に1回ずつショーを行う。エマは3本のソロ、インラインスケーターのハルヒくんとのダブルスを1本演技する。バーチカルランプが設営されるのは当日だ。練習時間は少ない。でもハジケテマザレで使用したランプと同じなので、短時間で合わせられるだろうと思った。しかしエマはかんたんじゃないチャレンジをしようとしていた。前回のショー、ハジケテマザレのときには一度も試さなかったフリップボディバリアル540※2を披露することを目標にしていたのだ。
会場に到着し、すぐに準備をすませて練習を開始。ウォーミングアップとして数本軽く滑ってからバックサイド540※3とフリップインディ※4をやってみたところ、すぐに合わせることができた。そこで今回の目標、フリップボディバリアル540に取り掛かる。やはりかんたんには行かず、30分たってもなかなか合わせられない。その後も調整したものの、けっきょく午前の練習ではメイクできなかった。そして、本番を迎えた。
1本目も2本目のルーティンも無事に成功。3本目では当初予定していなかったロデオ※5を加えてきた。練習でフリップボディバリアル540が成功しなかったので、代わりのトリックを入れたのだ。そしてそのルーティン最後のトリックとしてフリップボディバリアル540を入れた。結果は、失敗に終わった。
昼食を挟み練習を再開。午後の本番までは1時間もない。エマは焦り、少しイライラしていた。ここまで合わないことはなかなかないのだ。
そして本番。午前の部同様に1本目、2本目ともなんなくメイクし、いよいよ3本目。ここでぜったいに決めないといけない。エマの顔はいつになく真剣だ。しかしながら、ロデオとフリップインディは決めたが、ラストトリックのフリップボディーバリアル540はメイクできなかった。だがそのときだった。安床さんのひと声により、もう1本チャレンジさせてもらえることになったのだ。
今日は練習も含めて1本も成功していないフリップボディバリアル540。チームグッドスケートのメンバーとたくさんの観客が見ているなか、最後の挑戦がスタートした。まずはエアーを2回。そして、フリップボディバリアル540を仕掛ける。するとタイミングも回転もばっちりハマり、エマはみごとにメイクした。
着地するやいなや両手を突き上げ、大きくガッツポーズをするエマ。最高にうれしそうだ。みんなも喜んでくれている。すごい感動だ。この経験は、エマにとってとてつもなく大きいものとなったに違いない。
イベントが終わったあと、エマとこの日のことを振り返った。プレッシャーのなか、メイクできたことはよかった。しかし、ふだんからもっとメイク率を上げる練習を積まなくてはいけない。そして、いつもと違うバーチカルランプでもすぐに対応できるようにしないといけないとふたりで痛感した。ショーでもコンテストでも、決めるところできっちり決めれるようにならないといけないのだ。
※1 人気パンクバンド、HEY-SMITHが2010年にスタートさせたパンクロックフェス。通称ハジマザ。
※2 空中でボードを縦に1回転、お腹側へ1回転させながら、体を1回転半させるトリック。
※3 空中で体とボードを一緒にお腹側へ1回転半させるトリック。
※4 空中でボードを縦に1回転させて手でつかむトリック。
※5 空中で体とボードを一緒に背中側へ1回転半させるトリック。別名はフロントサイド540。
ラストチャンスをくれた安床 武士さん(右端)、そしてチームグッドスケートのみんな、応援してくれたお客さんに本当に感謝したい。海体祭を通して、また新たに学ぶことができた
写真:河上 竜平
POSTED : 2023-10-06