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エマ流スケートボードの練習法

文:河上 竜平

 

エマの練習方法や時間、トリック、スクール、スケートボードのサイズなどについてインスタグラムのダイレクトメッセージで質問をもらうことがよくある。小学生の保護者からのメッセージがほとんどだ。ときには、アジア各国からエマの練習を見にきて撮影をする方から直接質問を受けることもある。海外の友だちとの交流はエマにとってかけがえのない経験になるし、海の向こうに暮らすスケーターがエマのことを知ってくれることはありがたい。

 

最近になり、質問をいただく機会がさらに増えた。そこで今回は、エマとわたしが行なっている練習法についてあらためて書こう。

 

わたしの仕事の具合によって多少のずれは出るが、スケートボードをするのは週4回。休憩を含めて、平日は3時間、土日は5時間ほどだ。以前は週5回だったのだが、疲労の蓄積と怪我のリスクを考えて練習日数を減らした。何よりエマは年齢がまだ低いので、生活や考え方の常識がスケボーに偏りすぎないようにバランスをとるようにしている。おおげさに文武両道とまでは言わないが、ちゃんと学校に通い、スケーター以外の友だちと仲よく遊ぶことも楽しんでほしいからだ。

 

練習時間の割合はバーチカルを7割、ランプやボウルを3割くらいにしている。現時点では、バーチカルにおいてはメイク率が高いトリックのルーティン練習の割合が多く、メイク率が低いトリックの練習のほうが少ない。この夏休みの期間でいえば、最初の2時間は、まずウォーミングアップとしてランプやボウルで滑ってからバーチカルでいろいろな技のルーティンを行い、残りの1時間でメイク率が低いフリップボディバリアル540※1を組み込んだルーティンを練習をしていた。

 

ひとつのトリックをできるまでやりつづけることはあまりしない。もちろん反復練習もある程度は必要だと思う。初めて取り組むトリックは成功させるために反復することもあるが、基本的には練習に変化をもたせるようにしている。たとえば540を練習するのであれば、540の前後のトリックを変えたり、トリックを行う位置や高さを変えたりと意図的に変化を与えるのだ。これはインターリーブ学習※2をスケートボードの練習に取り入れた練習法だ。むずかしい話は抜きにしても、反復練習はエマが飽きるうえにイライラすることも多いため、変化を持たせるようにしている。

 

練習時間や練習方法は、エマの成長や付随するさまざまなことを考えて日々変化させている。エマには大きなものから小さなものまでいろんな目標があり、その目標に向かって日々がんばっている。もちろん目標設定や達成させるためのプロセスを考えることは大切だ。でも重要なのは、うまくいかなくてあきらめそうになったときに耐えること。耐えられれば、またがんばれる。あきらめなければ、またがんばれる。わたしはエマにそう伝えている。

 

失敗に耐えるために、メイクをあきらめないために行っていることがある。まず、新しい技にチャレンジしたけれどなかなかうまくいかないことや、いつもできていた技が急にできなくなったときのことを事前にイメージする。続いて、そんなときにはどうモチベーションをあげて、どうすればまたチャレンジできるのか、さらには、うまくいったときに自分やまわりの人たちはどんな気持ちになるのかをふたりで想像するのだ。

 

どうしてもやりたいことがメイクできないとき、そうして思い浮かべた明るい未来を思い出せば、またチャレンジできる。今までの経験から、エマもわたしも信じている。あきらめずにチャレンジすることさえできれば、いつかうまくいくと。

 

そして何よりもむずかしく、もっとも大切だと思うのは継続すること。プロとして活躍するスケーターは、がんばりつづけている人。エマはそんな彼らを尊敬し、その背中を追っている。

 

 

※1 空中で体を横に1回転半させるあいだにボードを横に1回転させるボディーバリアル540に、ボードを縦に1回転させるキックフリップを組み合わせた高難易度トリック。
※2 何かを習得しようとする際に、複数の情報やスキルをあいだに差し挟んで学習する方法。

ハイエアーのルーティン練習をするエマ。わたしたちの練習法が正解かどうかはわからない。しかし試行錯誤を続けた結果、ぐんぐん上達していることは確かだ。秘訣は、苦しいときでも楽しめるようにすること

POSTED : 2023-09-08