文:原田 正規
新しい物には誰もが気持ちが上がるに違いない。わたしにとっては、それがサーフボードであればなおさらだ。「早く乗ってみたい!でもいい波のときにおろそう」「ステッカーをどこに貼ろう?」などと、47歳になった今でもそのワクワクする気持ちは変わらない。
現役のころ、月に2~3本のニューボードをテストするようなことがよくあった。調子悪いボードはすぐ乗り換える。使わなくなったボードは友人にあげるかサーフショップに並ぶかのどちらかだった。
コンペティターにとって、そのボードのパフォーマンスがもっとも高いニューボードは必要不可欠だ。黄ばんだサーフボードを使う真剣なコンペティターはほとんどいない。それは、プロフェッショナルでもアマチュアでも同じことが言える。
コンペティターたちはニューボードのことを「フレッシュボード」と呼ぶ。文字どおりフレッシュなサーフボードは、乗る者のモチベーションを高く持つ効果もある。つまりニューボードは、つねにいいサーフィンをするうえでなくてはならない要素のひとつなのだ。
ニューボードを手に入れるには、シェイパーに依頼してつくるカスタムオーダーと、店頭に並んでいるストックボードを選ぶ方法がある。わたしは自作する以外では、シェイパーと細かい部分を直接話合うカスタムオーダーでしか自分のボードつくったことがない。たしかに店置きのストックボードには見て選ぶ楽しさはある。しかし長い目で見て本気で上達を目指すならば、カスタムオーダーをおすすめする。自分に合わせてつくってもらったカスタムボードをテストしたほうが、サーフボードに対する理解が深まるからだ。
今は昔と違い、調子のいいサーフボードがあればそれをマシンに読み込ませてまったく同じデザインのコピーボードをつくることができる。現代のトッププロサーファーたちのあいだでは、調子がよかったサーフボードのデータを次の作成時に数字でカスタムする方法が主流になっている。そのやり方を駆使すれば、国産と外国産との差はまったくないとわたしは考えている。世界レベルを目指すコンペティターにはいい時代である。
しかしながら、何十年もの長きにわたりハンドシェイプしてきたシェイパーにカスタムオーダーしてできあがる、自分だけのために手づくりされたニューボードにはやはり特別な価値があると思う。
みずからの手で削ったニューボードにワックスを塗る筆者。いくつになってもワクワクする瞬間だ。本文最後にあるハンドシェイプに対するこだわりは、わたしのSTORY「フリーマニューバーを求めて Part2」にくわしく書いているのでぜひ読んでほしい
写真:飯田 健二
POSTED : 2023-08-25