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SLS※1東京大会に潜入

文:河上 竜平

 

※1 世界最高峰のストリートスケートボードの大会“STREET LEAGUE SKATEBOARDING”の略称。

「明日8月11日に有明アリーナでSLSがあるが来ないか」

 

前日にPGフィルムズのペドロ・ゴメスさんからお誘いの連絡があった。SLSはスケートボードにおいて世界でもっとも有名なコンテストのひとつ。今回、日本で初開催されることは話題になっていた。

 

エマはバーチカルをやっているがストリートも好きで、SLSも含めていつもいろいろな動画を見ている。こんな機会はなかなかない。エマも「ぜったい行きたい!」と言っている。祝日で仕事も休みということで、ふたりで一緒に東京へ向かうことにした。

 

お盆の渋滞を回避するため夜中に出発。東京に到着したのは明け方。わたしたちは会場近くで仮眠をとった。

 

ペドロさんと合流し、会場に入る。そして選手とスタッフの控室へ。ブラジルの新星、16歳の人気スケーターのフィリペ・モタが食事をしている。エマはさっそく驚いた様子で「すごいな」と感動していた。続いてメインホールに行く。いつもユーチューブで見ているSLSのセットが目の前にあり、「ここは海外か」と錯覚した。

 

この日は公式練習日で、女子の練習が始まっていた。選手同士で談笑している様子も見えるが、短い練習時間のなかで調整する姿は真剣そのものだ。とくに何度も何度も転びながらも攻めている東京オリンピックの金メダリスト、西矢 椛が印象的だった。

 

午後から男子の練習が始まった。スピード、高さ、技術。どれを取っても超ハイレベル。エマはあっけにとられている。動画で見るよりも、生で見るほうがその圧倒的なすごさがよくわかる。前日に急遽出場することになった池田 大暉がいた。池田は幼少期から数々のコンテストで優勝し、昨年のXゲームズ※2千葉大会では銀メダルを獲得した選手だ。彼のファンであるエマは「優勝してほしい」と興奮している。SLS最多優勝の記録を持つ世界トップクラスのスケーター、ナイジャ・ヒューストンも登場。そのオーラはひときわ輝いていた。

 

SLS、Xゲームズなど世界の有名コンテストで何度となく優勝している東京オリンピックの金メダリスト、堀米 雄斗は練習時間が始まってもなかなか現れない。エマはほかの選手の練習を見つつ、今か今かとソワソワしながら選手の出入り口付近をウロウロしていた。そうこうしているうちにエマがトイレに行きたいと言い出す。そしてトイレに向かおうと通路を歩いていると、堀米が現れた。たくさんのカメラに囲まれていて、あきらかに注目度ナンバーワン。当然ながら話し掛ける間もなく、エマとわたしは通り過ぎるスター選手の姿をただ眺めた。エマは「堀米くん格好いいなー! ヤバいなー!」と絶賛している。

 

トイレから会場に戻ると、コース裏のフラットスペースで堀米がアップしていた。その無駄のない動きに、エマは「アップだけでめちゃくちゃうまい」と感動を隠せない様子だった。本番コースでの練習はたった数時間程度。そこでルーティンを考え、本番を迎え、難易度の高いトリックを披露するのだから、プロのスキルの高さと集中力は半端じゃない。

 

翌日のコンテスト本番も見たかったが、明日は予定がある。帰り道、今回のプロの練習についてエマと話をした。
「ふだんの練習でもはずさんようにしてメイク率上げてるから、試合前にすぐに合わして決めれるんやろな」「練習でミスりまくってたら、ルーティンに入れれへんもんな」「ミスっても、あんまりイライラせんと考えてたな」
エマは幼いなりにうまくなろうと必死に考えている。プロの滑りを目の前で見ることほど上達につながることはない。

 

 

※2 さまざまなエクストリームスポーツを集めて夏と冬の年2回開催される世界最大級の競技大会。

SLSの会場にて。目の前で見るトッププロの練習はエマに気づきを与えたようだ。この翌日に開催された大会では、男子は堀米 雄斗、女子はオーストラリアのクロエ・コベルが優勝した。準優勝は池田 大暉と西矢 椛

アメリカのトッププロスケーター、ダショーン・ジョーダンと一緒に記念撮影。じつはわたしが彼の大ファンだ

POSTED : 2023-08-18