文:原田 正規
台風が来たときにサーフィンをするのは、大きな波に乗るのが好きなフリークたち。もちろんわたしも、その日を楽しみにしている。
現役時代は台風を追って全国を飛びまわっていた。しかし今では家族を持ち、以前ほど時間と余裕がないので、波を追うのも近場に限られる。台風の進路を見ながら波や風の向きなどの情報をウィンディというアプリでチェックしつつ、勝浦、ときには南房総や内房あたりまで波を探しにいく。
台風の波でのサーフィンは、それなりのレベルと経験がなければ無理だ。ある程度のレベルのサーファーでも、初めて入るポイントであれば、その場にいるサーファーをリスペクトする必要がある。また波を見て、自分がとれるポジションを状況に応じて判断できなければほかのサーファーたちの迷惑となり、大問題になりかねない。なぜならば、その波を毎年楽しみに待っているローカルサーファーやわたしのようなフリークが本気でサーフしているからだ。
台風の波は通常とは異なり、海のスケールが大きく変わってくる。波のパワーも桁違い。そんな波をなめてかかれば、大自然の洗礼を受けることは間違いない。ひどい目に合わないよう、わたしは日ごろから体のコンディションを整えている。そして海に敬意を払い、サーフィンをしたあとは心のなかで無事にサーフできたことを感謝する。
どうしても台風がもたらす大きな波に乗りたいと思ったら、まずは実力のあるフリークサーファーたちと一緒に行動することをおすすめする。そしてローカルサーファーを紹介してもらい、海で親しくなれる関係を築くことが大切だ。フリークサーファーは、自分が入る海のローカルコミュニティを大事にすることで安全にサーフィンを楽しんでいる。
路上駐車や大人数での大騒ぎ、ゴミのポイ捨て、立ち小便などはもってのほか。そんなことを平気でする身勝手なサーファーも少なくないのが残念だ。一部のヤツらの悪行によって地域の反感を買い、そこの海でサーフィンができなくなることがある。サーファー以外の地元住民にも気配りできるサーファーでいることが重要だ。地元の人たちに歓迎してもらえれば、サーファーにとって大切なサーフポイントが守られていく。
波が上がれば、いろいろなポイントで波乗りを楽しめる。それはサーフィンの醍醐味のひとつだが、同時に気をつけなければならないことも増えていく。その点を忘れず視野に入れておけば、安全にサーフィンを楽しめるはずだ。
つねに危険と隣り合わせなサーフィン。準備と心構えがあれば、大自然からご褒美をいただけることもあるだろう。
台風7号の波に乗る筆者。長年の経験と勘を頼りに大きなグッドウェイブを探しあて、整えた体とサーフボードで海に入る。そんなシンプルなことがこの上なく楽しい
写真:飯田 健二
POSTED : 2023-08-18