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カイマナの今

文:原田 正規

 

長男のカイマナは現在10歳。サーフィンを始めたのは4歳のときだが、もっと小さいころからボディボードで波乗りを楽しんでいた。大きな大会での優勝経験はまだないものの、ローカルコンテストでは優勝したことがある。また幼少期から柔術を習っていることも手伝ってか、サーフィンに対する姿勢は真剣そのものだ。

 

その性格を見て、プロサーファーに必要な要素を持ち合わせているとわたしは感じている。先日行われた仙台新港の大会でカイマナは一コケ。試合直後はくやしくて泣いていた。でもわたしと話し合って敗因を理解すると、すぐさま練習に向かった。そして友人のヒートを最後まで応援し、試合がすべて終わるとまた練習に行く。やる気と前向きな姿勢がカイマナには備わっている。試合に負け、いじけていても仕方がない。くやしさをバネに練習しなければ成長しない。どの世界でも一緒だろう。カイマナはそれをいやいややるのではなく、本当に勝ちたいがためにおのずから練習している。そういう素直さや純粋さがプロには必要だと思う。

 

ふだんのカイマナの生活はサーフィンを中心にまわっている。まず学校前に朝一のサーフィンをして登校。下校後にふたたびサーフィンをするというのが日課だ。柔術がある日には夕方早めにサーフィンをしてから稽古に行くので、20時くらいにはくたびれて寝てしまう。わたしの幼少期とくらべものにならないほどカイマナは充実した毎日を過ごしているように見える。

 

わたしたち家族が暮らす一宮町東浪見地区は国内有数の波が豊富なエリア。それゆえサーフィンのために移住する人々で町はにぎわい、日本国内でもっともレベルの高いサーファーが育っている。わたしが思うに、あと10年以内にここ東浪見からCT※1に入る選手が出るはずだ。そんな恵まれた環境のなか、カイマナのサーファーとしての成長は著しい。だがコンペティターとしてはまだまだ弱い部分も多い。試合中、気持ちがやさしすぎて波を譲ってしまうことや詰めがあまい部分など課題はたくさんある。本人がみずから弱点を理解し、克服し、強いコンペティターに育ってくれることをわたしは願っている。

 

 

※1 世界のプロツアーを運営するWSL(ワールドサーフリーグ)による世界最高峰のワールドツアー「チャンピオンシップツアー」の略称。

毎日波に乗るカイマナはぐんぐんと腕を上げている。家からこの海までは歩いて数分。本当に恵まれた環境だと思う

写真:飯田 健二

まだ幼いなりに「勝たなきゃいけない」というプレッシャーを日々感じているカイマナ。試合で結果が出ないときには精神的なケアが大切だ。コンペティターの気持ちが痛いほどよくわかるわたしは、彼が次へ進むためのサポートに尽くしている

写真提供:原田 正規

POSTED : 2023-07-28