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ゲームは遊びか練習か

文:河上 竜平

 

4歳のころからスケートボードを始めたエマは、スケートパークで滑る以外に家でも練習をしている。練習と言えば聞こえはいいが、その方法はゲームだ。

 

エマがゲームにハマり出したのも4歳。当時、ニンテンドースイッチで遊ぶ子どもを保育園でちらほら見かけるようになっていた。みんなと同じようにニンテンドースイッチで遊んでいたエマだったが、ユーチューブで「スケート3」を知るなりプレイステーション3(PS3)をサンタクロースにお願いし、プレゼントしてもらった。

 

「スケート3」はすべてが英語表記で日本語の説明がいっさいない(いずれにしてもエマは読めなかったが)。「おもしろくない」とすぐにあきらめてニンテンドースイッチに戻ると思っていたのだが、思いのほかのめり込んだ。感覚的にプレイできることもその理由だろう。でもエマの興味のすべてはスケートボードだと考えればすんなり納得できる。ハマりすぎて、当時は車にPS3を積んで移動中にも遊んでいた。

 

「スケート3」が発売されたのは2010年。エマが生まれるよりすいぶん前だ。それを2023年現在もいまだにプレイしている。エマにどこがそんなにおもしろいのか尋ねると、こう答えた。

 

「Xゲームズ※1みたいなバートランプ※2やメガランプ※3、ボウル※4、ストリート※5もあるし、いろいろな町とか工場とかスポットがたくさんあっておもしろい」

 

スケートボード好きはいつまでも遊べるゲームなようだ。

 

まだ保育園に通っていたエマがバーチカルでバックサイド540※6を成功させたいと強く思ったのはこのゲームの影響かもしれない。エマがやってみたいと言い出すトリックは「スケート3」でやっている技が多いのだ。「スケート3」はたしかにスケーターのイマジネーションをかき立てる。エマはバーチカルで将来メイクしたいルーティンとベストトリック※7をノートに書いている。そして、定期的に更新されていくこのルーティンやベストトリックを「スケート3」で試している。なかには不可能だと思うようなトリックもあるが、エマ自身は「スケート3」でできるトリックは実現可能だと思っている。

 

わたしはエマのスケートボードの動画をたくさん撮影している。インスタグラムにアップするためでもあるが、成功も失敗もエマに見せて、今の自分の滑りを確認させることが大きな目的だ。時間も限られているので、できるだけ効率的に練習したい。ひたすら滑って覚えるよりも、何度も自分の滑りを見返してイメージを整理することが大切だと思う。そのイメージトレーニングにも「スケート3」はひと役買ってくれている。バートランプですでに慣れたトリックを組み込んでルーティンを考えるときにも有効だ。もちろん自分で滑りながら考えることが基本だが、何パターンも試しているあいだに体力を消耗する。でもゲームは疲れないので何度でも新しいルーティンを考えられる点がすばらしい。

 

スケートボードの上達には自由な想像力と具体的なイメージがとても大切だ。想像力を膨らませて新しいトリックを考える。そしてそのトリックをメイクするためには、体の動かし方やタイミングをできるかぎり的確にイメージする必要がある。「スケート3」はゲームだが、そのふたつを鍛えられる。きっとエマはそこまで深く考えていない。でも単純に「おもしろい!」と「スケート3」で練習(?)を続けていくのだろう。

 

 

※1 さまざまなエクストリームスポーツを集めて夏と冬の年2回開催される世界最大級の競技大会。
※2 最上部が垂直になったハーフパイプ状の巨大構造物。これをコースとして競い合う種目は「バーチカル」と呼ばれる。
※3 楕円を半分に切ったようなハーフパイプ状の巨大構造物。
※4 アールというカーブしたセクションで囲まれたプールのような構造物。アメリカで水不足になった際、金持ちの家の水のないプールをスケートボードで滑ったことが発祥と言われている。
※5 街中にある斜面や縁石、手すり、階段を模倣した構造物。
※6 空中で体とボードを一緒にお腹側へ1回転半させるトリック。
※7 現状の自分にできうる、もっともむずかしくインパクトのあるトリック。

 

最近では弟のヒイロも「スケート3」を始めた。兄弟で楽しく遊びながら練習を重ねている

POSTED : 2023-07-21