文:河上 竜平
エマのホームグラウンド、ジースケートパークは自宅から車で40分ほどの距離にある。なんと言っても特別なのは、中央にそびえるバートランプ※1。ほかにも大小のランプ※2やボウル※3がある。セクションの違いはもちろんのこと、パークにはそれぞれカラーがある。ジースケートパークに初めて来たときの印象は「敷居が高い」。寡黙に練習している人、そしてスキルが高い子どもたちが多いのだ。でもみんな自由に滑っていて、広くて居心地がいい。そして家から近いということで通いはじめた。
最初のころは週末だけ滑りに行っていた。平日の夜にエマとハマっていたのは、スーパー銭湯に行くこととプラレールかニンテンドースイッチで遊ぶこと。考えれば、平日でも練習に行く時間はある。エマが早くうまくなってくれたらうれしい。本人もそうだろう。そこで、平日もパークに通うことにした。
当時の平日のジースケートパークにはエマと同年代のスケーターはいなかった。土日と異なり、人数は少なく静かな雰囲気。洋楽のパンクロックとスケーターが滑る音くらいしか聞こえない。初心者用の低いランプも貸切状態。エマが楽しく滑れるように、当時ハマっていたスプラトゥーンの音楽をスマートフォンで流して練習していた。
そんなある日のこと。エマの師匠、そして親友となる大地くんに出会った。当時のエマは6歳で、大地くんは8歳。どちらから声を掛けたのかは定かではない。以降、大地くんがエマと一緒に滑ってくれるようになった。
当初のエマは休憩をとることもほとんどなく、ひとりでただガムシャラに滑っていた。でも大地くんと出会い、取り組み方が変わった。トリックを教えてもらい、メイクすることやチャレンジすることに楽しみを見出したのだ。何より、友だちと滑る楽しさを知った。保育園児だったが、なかなかのハイペースでトリックを習得できたのは大地くんのおかげだ。
※1 最上部が垂直になったのハーフパイプ状の巨大構造物。バーチカル(バート)という競技のコースとなる。ジースケートパークにあるものは、高さ約4メートル。
※2 楕円を半分に切ったようなハーフパイプ状の構造物。
※3アールというカーブしたセクションで囲まれたプールのような構造物。アメリカで水不足になった際、金持ちの家の水のないプールをスケートボードで滑ったことが発祥と言われている。
エマよりも少し年上の大地くん(左)。年の差は関係なく、同じ楽しさを共有できることもスケートボードのいいところ。友だちと滑ればもっと楽しい
写真:河上 竜平
POSTED : 2023-06-23