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ケリー・スレーター

WSL / KELLY CESTARI

文:原田 正規

 

サーフィン界で11回のワールドタイトルに輝き、それに加えて最年少で最年長のワールドタイトル獲得という大記録を保持するスーパースター、ケリースレーター。

 

ケリースレーターを生で初めて見たのは、宮崎の世界アマチュア選手権のときのこと。わたしは中学生だった。佐賀から先輩の車に乗り込んで宮崎に向かう6時間のドライブのあいだ、ケリーのサーフィンを見ることに興奮しすぎて、まともに寝ることもできなかった。

 

アマチュア当時から優勝候補に挙げられていたケリーは周囲の期待通り優勝を飾り、ほかのサーファーとの格の違いをわたしたち観客に強烈に見せつけてくれた。

 

わたしの少年時代のサーフスターには、トム・カレンやマーチン・ポッターがいた。そしてコンテストサーファーから脱線した不良っぽいスタイルのフリーサーフィンが人気だったマット・アーチボルドやクリスチャン・フレッチャーたちがライフスタイルのアイコンだった。

 

その後、ケリースレーターが現れてからは、サーフィン界がケリー一色となった。まさに今の野球界のスーパースター、大谷翔平と同じく、世間をあっと言わす存在だった。

 

ケリースレーターを筆頭とするニュースクール世代はサーフィン界に革命をもたらし、ムーブメントを確実に変えてしまった。それまでのサーフィン界は、ドラッグやヒッピー、アウトローといった反社会的なイメージも多かった。もちろんそれがすべてではなかったが、人気がある選手は何かしら反骨精神を宿していた。だがケリー・スレーターたちはクリーンなイメージで、サーフィン以外にもバンドを組んだり映画出演をするなどタレントとしての才能もあり、それらすべてを健全に楽しんでいるといった感じだった。

 

わたしたち世代が経験したサーフィン全盛期のような盛り上がり方は今後来るのだろうか? ケリーのように周囲の期待どおりに優勝できるサーファーは現れるのか? あの時代のサーフィンインダストリーが大きく成長していった背景には、こうしたサーフスター選手の存在があったことは間違いない。そんなサーフスターたちが今後も現れることが、わたしの楽しみのひとつにある。それもできれば日本から現れてほしいものだ。

ケリー・スレーターの伝説的な競技キャリアにオマージュを捧げ、映像作家のテイラー・スティールが制作したショートムービー。ケリーは53歳になった今も、サーフィン界にとんでもない影響を与えつづけている

POSTED : 2025-04-03