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トレーニングにAIを導入!?

文、写真:河上 竜平

 

近年、AIの進化は目覚ましく、エマのトレーニングにも活用できるサービスが登場した。それは、グーグルが提供するノートブックLMである。

 

生成AIの代表的なサービスとして、チャットGPT、グーグル・ジェミニ、ディープシークが知られているが、これらはインターネット上の情報をベースにさまざまな話題に対応できる。いっぽう、ノートブック LMは「自分専用AI」というイメージで、アップロードした自分の文章・資料・データを理解して質問に答えることが可能である。ウェブサイトのリンクや画像・動画もアップロードできるが、対応するファイル形式などの詳細はここでは割愛する。

 

注意すべき点は、得られる回答はアップロードしたデータだけがベースとなる点である。使い方はこんな感じだ。わたしが趣味の一環でまとめた過去のXゲームズ※1のバート競技におけるスケーター別ルーティンを読み込ませて「登場頻度がもっとも高いトリックを教えて」と尋ねたら、解答してくれるのだ。また、エマがメイク可能なトリックのデータを読み込ませ、過去のXゲームズのルーティンと照らし合わせて「ルーティンを考えて」といった質問にも対応可能である。もちろん、アップロードするデータの量と質によって精度は左右される。

 

スケートボードをしているとさまざまなことを考える。長期的な目標をもとに短期的な目標を設定して日々の練習に落とし込むのだが、けっして機械的にはならずに、メンタル、生活リズム、食事など多岐にわたる要素を考慮する必要がある。同時に複数の事柄を考えるのはむずかしく、忘れてしまうことや覚えきれないこともある。そこで役立つのがノートブックLMだ。自分専用のAIが頭のなかを整理してくれて、記憶の補助役となる。有名なチャットGPTはあくまでもインターネット上の情報をベースにしているため、たとえば「バックサイド540※2をするときの注意点は? 有効な練習方法は?」と尋ねても、一般的な注意点や練習方法しか提示されない。もちろん一般的な意見も有効だが、自分だけの経験や知識は加味されていない。ノートブックLMでは、バックサイド540に関する自分の経験則や知識をデータとしてアップロードしておけば、それにもとづいて答えてくれる。

 

まだ使いはじめたところだが、使いこなせれば、とても有益だと考えている。20年くらい前のスケーターはスケート動画をビデオカメラで撮影していた。そしてトリックを覚えるために、DVDかスケート雑誌の写真から想像を膨らませていた。スマートフォンが普及した現在は、誰でもかんたんにスマホで動画撮影が可能で、一瞬で動作確認ができる。トリックはSNSやユーチューブで学んでいる。近い将来、ノートブックLMがバージョンアップを重ねることで、今は高額な設備が必要なモーションキャプチャも、場所を選ばずにスマホで撮影したスケート動画をアップロードするだけで解析できるようになるかもしれない。その結果、滑りの癖や改善点、効率的なトレーニング方法などを提示してくれる可能性も十分考えうる。

 

各種機器を用いた動作分析は多くのスポーツが取り入れているし、サッカーや野球などのマジャースポーツではすでにAIも導入しているだろう。スケートボードも、どこかのタイミングでいっきにAIの導入が進むかもしれない。

 

 

※1さまざまなエクストリームスポーツを集めた世界最大級の競技大会。夏と冬の年2回開催される。
※2 空中で体とボードを一緒にお腹側へ1回転半させるトリック。

ノートブックLMの画面。データをアップロードしたうえで個人的な対話ができる

POSTED : 2025-03-07