文:原田 正規
写真:飯田 健二
先日8月21日から開催されたSリーグ開幕戦。なんといっても日本のサーフィン史上初の記念すべきコンテストだ。選手たちはこの初戦にかける強い思いがあったに違いない。わたしは45歳以上のマスターズクラスにエントリー。人数は少ないが、日本のトッププロとしてかつて君臨してきた強者選手がそろっていた。
コンテスト会場に着いたのは大会2日前の8月19日で、波のサイズはオーバーヘッド。この大会ではショートボードとロングボードが同時に開催されるため、ショートとロングの練習時間が入れ替わるなど今までにない状況となっていた。
またこのロングボードウィメンズクラスに今年プロデビューしたばかりのわたしの娘、コアがエントリーしたわけだが、コンテスト数日前の練習中に肩を脱臼し、救急車に運ばれるという波乱の展開となった。残念ながら、コアは欠場。親子で初めてのプロコンテストに出られるという浮いた気持ちでいたわたしはいっきに崖から突き落とされた気分になったが、「今回は一緒に出場するのはあきらめよう」と気持ちを切り替えた。こうなると、娘の分もやらなければという空気に必然的になる。だがわたしはできるだけ気負うことだけはしないように心掛けた。
気を取りなおしたコアはわたしのサポートにまわってくれて、今何が行われていることや波の状況をつねに教えてくれたり、ヒート前には「緊張してんの?」とわたしをなごましてくれた。
そのコアのサポートがあったこと、そして試合前に受けとったポスティブダイレクションサーフボードのスワローテールが絶好調で、わたしはファイナルまで1位通過を果たした。ファイナルまで進出して、気分は最高だった。なにせ昨年のシニアツアーでは2戦とも1コケ。そのうちの1戦はダブルインターフェアーをとられて合計点数が0点。わたしのプロ人生でもっともきつい結果だったからだ。
ファイナルの相手は、わたしが現役のころに戦ってきた方々で、歴代チャンピオンの河野 正和選手に、牛越 峰統選手、伊豆のパイプライナーで試合巧者の今村 厚選手。誰が勝ってもおかしくないメンツだった。
わたしは早めに仕掛けて、相手にプレッシャーをかけながら前半リードした。しかしその後、このヒートのベストウェイブをつかんだ河野選手が8.75、続いて4.20のスコアを出し逆転。その後、わたしもなんとかバックスコアを上げてさらに逆転成功してこのまま逃げきりかと思った矢先、河野選手にまたもや7.00のハイスコアを叩き出され完全にやられてしまった。
ファイナルまで残り、結果は準優勝。くやしさもあったものの、わたしにとって、この1年の苦しみから解放された瞬間だった。
史上初となるSリーグ開幕戦にふさわしいコンテストだった。ジャッジ、スタッフ関係者一人ひとりが今までにない力を出している雰囲気があり、わたしたち選手にもその熱意がしっかり伝わってきた。コンテストが終わって今、やっぱりまだくやしい思いが残るが、次の伊豆戦までに体調を万全に整えて優勝を目指したい
POSTED : 2024-09-09