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夢のXゲームズ Part 1

PLAYERS : EMA KAWASAKI

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河上 恵蒔
EMA KAWAKAMI

 

夢のXゲームズ
Part 1

 

トニー・ホークが主催するバートアラートで6位入賞を果たし、夢見ていたXゲームズ※1の出場権を獲得したエマ。ベンチュラ大会に向けて、ふたたび海を渡った。

 

※1 さまざまなエクストリームスポーツを集めた世界最大級の競技大会。夏と冬の年2回開催される。

 

文、写真:河上 竜平

帰国5日後、またアメリカへ

 

Xゲームズは基本的に招待制だ。しかし、今回エマが出場することになったカリフォルニア・ベンチュラで開催されるXゲームズはいつもと違った。出場者は昨年度のXゲームズの上位入賞者、そしてバートアラートの入賞者のみ。また、予選となるバートアラートへの出場もむずかしく、タンパプロという世界最高峰のコンテストの上位者とワイルドカード4名しかエントリーできない。つまりXゲームズは、それほどまでに狭き門なのだ。もちろんエマは複雑な出場要件のことなど理解していなかった。ただシンプルに自分のベストを尽くし、Xゲームズの出場権を手にした。

 

今回エマが出場することで、Xゲームズの全競技においての男子史上最年少出場記録が更新された。これまでにこの記録を塗りかえたスケーターはナイジャ・ヒューストン、ジャガー・イートンという現在のトップスケーターでありオリンピックメダリスト。そしてエマのあこがれ、ギー・クーリー。

 

「ギーの記録更新できたー!」

 

エマは現時点で9歳。10歳でXゲームズ出場というギーの記録を1歳上まわった。記録を達成することが好きなエマはとても喜んでいた。

 

正直なところ、わたしはエマがXゲームズの出場権を獲得できると思っていなかった。そのためバートアラート終了後、ソルトレイクシティからすぐに帰国。その5日後にふたたびアメリカ行き(もちろん自費……)ということで、仕事の段取り、エアチケットの手配からエマの練習のサポートまでたくさんの調整が必要になり、本当に大変だった。

上空から見たロサンゼルスの街。平野がどこまでも続く景色に感激

LAX(ロサンゼルス国際空港)の名物、アメリカ国旗のエレベーターも見られて満足

少し疲れた様子のエマ。長時間の移動、時差ボケに絶え間ない練習と大変だったと思うが、幸い体調を崩すことなく、再度アメリカに降り立った

ヴェンチュラに到着。夢の舞台を前に大興奮

 

初めてのカリフォルニア、ロサンゼルス。「インスタでよく出てくるところや!」と、スケーターがインスタグラムにたびたび投稿しているLAXのアメリカ国旗を見て、エマは自分も「ついに来られた」と興奮している。

 

今回はレンタカーで会場があるヴェンチュラへと向かうことに。うわさには聞いていたが、ロサンゼルスの渋滞は本当にひどい。空いている時間帯ならば1時間で着く距離なのだが、2時間かけてようやくホテルに到着した。

 

ホテル近くのステーキレストランで夕食をすます。その後、エマが「見てみたい!」ということで、滑ることも入ることもできないのだが、Xゲームズの会場へと向かった。ホテルからフリーウェイを走って30分ほどの距離だ。フリーウェイのサイドにXゲームズの大きな看板があり、人気の高さがうかがえる。会場が近づくにつれてその数は増加。エリア全体がXゲームズ一色というムードだ。

 

そして、会場に到着。スケールがでかい。周囲はバリケードで囲われており、場内を見ることはできない。ロゴが描かれた巨大なバナーを見たとき、「エマはXゲームズに出場するんだ」とあらためて思い、感慨深かった。エマは「早くなかに入りたいなー」と、翌日から始まる練習を心待ちにしていた。

星条旗とともに、熊のマークのカリフォルニア州旗がたなびく。若いころにこのマークのステッカーやキャップを買ったことが懐かしい

サーファーが集まるベンチュラビーチ。古いピアがあり、これぞカリフォルニア!というムードが漂っていた

特設の観客席に掛かった大きなバナーを見て、スマホ片手に興奮するエマ。「こんなにも早くエマがXゲームズに出場する日が来るなんて……」とわたしは感傷に浸った

つづく>

POSTED : 2024-09-06