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生き方

文:原田 正規
写真:飯田 健二

 

これまでのわたしの人生のなかで、もっとも影響を受けたテーマは「生き方」。「ライフスタイル」とも言えるが、少しカジュアルに聞こえるので、「生き方」として紹介したい。

 

わたしは母子家庭で社会的地位もない家柄で育った。それがいけないと言っているわけではない。何不自由なく育ててくれた母親には今でも感謝しかない。

 

千葉に来てからは、出会ったいろいろな人たちに影響を受け、プロサーファーとしてのお手本もたくさん見せていただいた。ただ当初の自分は、他者と同じようにできない不器用な性格であった。そこで、育った家庭環境が生き方に大きく影響すると感じた。

 

たとえば当時、仲間で集まって遊んでいるときでも突然ひとりでサーフィンに行ったり、ワイワイ騒いでいる場の雰囲気に入れなかったりしていた。人と群れるのが苦手で、興味がない会話にはまったく触れない。空気の読めない、扱いづらい人間だった。だから先輩たちにもよく怒られたし、あきれきられたりしていた。それでさすがに「このままだと自分はいけないんだ」と思い、成功者の本などを読んで、「自分の軸」をずっと探していた。

 

稲盛和夫さんの『生き方』という本がわたしのバイブルとなっている。その内容の中心は「原理原則に従う」というあたりまえのことだった。それは、現代の社会における矛盾した状況をよりよく解決させる考え方であり、生きていくためにもっとも必要不可欠なことだと知った。

 

もうひとつのバイブルは、わたしが千葉に来たときに地元の友人が教えてくれた『葉隠武士道』。わたしの出身地佐賀にあった、江戸時代の武士としての志が記されている書物だ。映画『ゴースト・ドッグ』のテーマになるなど、世界的にも影響を与えている教えだった。

 

武士ということで厳しい内容ではあるが、少し解釈を現代風にすれば、言っていることはスティーブ・ジョブズやガンジーたちと共通する。つまり「死」と向き合うこと。彼らは死を意識して生きることで、偉業成し遂げている。この『葉隠武士道』にある「生きて帰れると思うなよ」という強烈な言葉はわたしの頭に刻まれている。プロ現役時代はまさにその言葉を実践して過ごしていた。

 

死を意識することにより、生が輝く。

 

教育、生き方…… みんなそれぞれの考えでいいし、そこまで追い込む必要もないと思う。しかし「人生を変えたい」とか「何か成し遂げたい」という思いがある人たちにとっては、これらの本は最高の教えになると思う。参考までに、読んでみてはいかがだろうか?

 

少なからず、この本たちの影響でわたしは家庭を築くことができたり、今また大好きなサーフィンを仕事にできるようになったことは間違いない。もしも自分がこの本を手にせず、自分を成長させることができないでいたならば、家族は持てず、大好きなサーフィンには戻れなかったことだろう。

 

自分の軸をつくることで、周囲に流されることもなくなる。これらの本にある教えを体現することで自分の軸ができて、自分に自信を持てるようになった。そして、その軸のおかげで、今もなお自分が成長していると感じている。

POSTED : 2024-07-01