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OCEANS TALK and SURF SESSION with Shigeaki Shito Part 1

PLAYERS : MASAKI HARADA

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原田 正規
MHASAKI HARADA

 

OCEANS TALK and SURF SESSION
with Shigeaki Shito
Part 1

 

オーシャンズ※1のメンバー、市東重明とひさしぶりに過ごす穏やかな時間。朝のサーフィンのあとは、トークセッションへ。原田は九十九里・片貝ポイントの近くにある市東のサーフショップ、レイジーボーイスキルを訪れた。

 

※1 2008年に結成。メンバーは原田 正規、吉川共久、山本 茂、山浦 宗治、山田 弘一、市東 重明、友重 達郎、遠田 真央という8名のプロサーファーたち。

 

文:高橋 淳
写真:飯田 健二

原田正規(以下、MH):最近はどんな生活をしてるの?
市東重明(以下、SS):店があって、サーフィンのレッスンがあって、サーフボードメーカーの業務。あとはプロサーファーとしてスポンサー関係の業務って感じだね。
MH:ベースはレッスン?
SS:全部同時進行だね。
MH:決まった動きはないんだ。店を始めて何年ぐらいだっけ?
SS:12~13年。
MH:そう考えると、ひと昔前とあまり変わってないね。
SS:最初はサーフショップをやるつもりはなかったけどね。サーフボードメーカーが始まりだった。レイジーボーイスキルを立ち上げて、そのオフィス兼ギャラリーだったんだよ。

市東 重明(しとう しげあき)●1975年12月24日生まれ。千葉県山武郡出身、在住。15歳でサーフィンに出会い、アマチュア時代に千葉県代表として全日本サーフィン選手権大会に出場。22歳でプロ資格を獲得し、国内外の試合を転戦する。その後、カルチャーやライフスタイルとしてのサーフィンを提案するべくフリーサーファーに転向。雑誌などのメディアで発信を続けながら、カテゴリーにとらわれないサーフボードブランド、レイジーボーイスキルの代表としてサーフィンの幅広い楽しみを伝えている。また千葉・九十九里にある自身のサーフショップ、LBSギャラリーで開催している市東道場プレミアムサーフレッスンは常に予約で埋まるほど絶大な人気を誇る。

MH:思い出した。たしかにショップっぽくなかった(笑)。ブランドはもう完全に定着したよね。
SS:なんとかね。時代もよかったよ。オルタナティブなサーフィンのブームも来て。おれはぜったい来ると思ってたから。ハイパフォーマンスショートボード(以下、ショートボード)ばかりじゃおもしろくないから。
MH:ショートボーダー上がりは、みんなそこに考えさせられた。おれなんか行くに行けなかった。ショートボードの世界で自分を築き上げてきたから。感性がないとできないしね。
SS:おれはプロのコンペティションシーンを退いてからフリーサーファー路線でやってきたからさ。サーフィンをライフスタイルとしてとらえて、いろんなボード乗ったり。

MH:コンペ辞めたのはいつ?
SS:32~33歳じゃないかな。
MH:自分のなかで「もうコンペは出ない」って決めたんだ。
SS:うん。コンペがいやだった。
MH:わかる。でも波がよかったら楽しいし、ロケーションがよければサーファーとしては気持ちが上がるじゃん。何がいちばんネックだったの?
SS:人と競うのがあんまり好きじゃなかった。波取り合って。どちらかというとおれは波をシェアしたい。選手のころから雑誌の撮影でトリップに行くことが多かったんだけど、そっちのほうが自分に合ってると思った。
MH:シゲはそういう仕事多かったよね。型にハマってなかった。
SS:試合まわらなくなって楽になったもん。スポンサーも了承してくれてさ。給料は同じだけいただけたから、その分メディアに露出したり、プロモーション活動はしなきゃいけないんだけど、すごく楽になった。「おれがおれでいられる」みたいな。
MH:そこだよね。プロサーファーになってある程度活躍すれば、注目を集めるところまでは行けるかもしれないけど、その延長上で自分らしく生きれるかって言ったらなかなかむずかしい。 みんながみんなそういうふうになれるわけじゃない。

SS:昔のプロサーファーの給料は試合の成績による評価が大きかった。あとはサーフィン雑誌のカバーショットを飾るとか。
MH:契約の更新が毎年あってさ。おれの場合は、ハワイとかで実績を積むことで強く言えた。
SS:写真残してね。おれにはフリーサーファーが合ってた。最近では大橋海人小林直海たちはフリーサーファーとして活動できてるよね。ブランディングができてるっていうかさ。
MH:いい動きなんじゃない。彼らは実力もある。昔は実力をともなうフリーサーファーってあんまりいなかったけど。
SS:彼らもコンペ上がりだから。そもそもレベルは高いわけじゃん。
MH:そういう意味では、うまくなくなるにはコンペは必要だよね。最初からうまいフリーサーファーなんてあまり聞いたことないじゃん。
SS:でもカリフォルニアに行くとさ、無名だけどうまい連中がゴロゴロいるよね。「ライフスタイルとしてサーフィンやってんだな」みたいな。だけど、日本もいいふうに変わってきたよ。サーフボードのジャンルもいろいろ出てきて、サーフボードの縛りがだいぶなくなってきた。ショートボードのプロがロングボードのプロになって「二刀流」なんて連中もいるしさ。

SS:正規は今日フィッシュに乗ってたけど、いわゆるオルタナティブボードにも興味あるんでしょ?
MH:もちろん。スタイルはすごくかっこいいと思うし、サーフィンにおいてすごくいい風を吹かせてると思う。だけど、その方向ばかりに寄りたくなくて……。ただ、自分のフィルターを通したうえで、そういうテイストのサーフボードをつくりたい気持ちはある。
SS:どんなときにフィッシュとかミッドレングスに乗るの?
MH:気分しだいかな。コンペに出なかったら、ショートボードにあまり乗らなくなるじゃん。そこってけっこう大きくない? おれはまだ選手として現役で「ショートボードでもっとうまくなりたい」っていう気持ちがあるから、ベースはやっぱりショートボード。でもサーフィンの楽しさを追求するんだったら、オルタナ系の世界観っていうのはすごくモチベーション上がるよね。
SS:気持ちいいからね。
MH:そう。だからたまにフィッシュとかミッドレングスに乗ってクルージングするのもすごく好き。

SS:試合のために練習もするわけでしょ?
MH:もちろん。それはベースとしてキープ。
SS:ショートボードなんかぜんぜん乗ってないな。チューブの波だったら乗りたいけど、膝腰サイズのタラタラの波じゃ無理やり感が出ちゃうもんね。
MH:そう。それはやりたくないじゃん。ショートボードだったら、最低でもオーバーヘッドのサイズがあって、大きなターンしてっていうのがおもしろいよね。
SS:だけど試合はそういうわけにいかないじゃん。オンショア※2 の膝腰でもやる。それでもやっぱスコアする技を出さないといけない。
MH:そこはもう、プロの大会では波のサイズに関してルールを決めたほうがいいと思うんだよね。膝腰の波ではやらない。そうすれば、試合も選手もクオリティが上がると思う。膝波でショートボードの試合をやったって、観るほうもおもしろくないよ。
SS:くじ引きになっちゃうもんね。いい波乗ったもん勝ちに。
MH:そう。それはつまんないかな。

 

 

※2 海から岸に向かって吹く風。風が波頭を潰すため、基本的にはサーフィンに適さない。

SS:でもリアルはそれだもんな。
MH:そういうのはアマチュアの世界で止めてほしい。プロっていうのは賞金が懸かってるし、生活も懸かってる。そのうえで「見せる」というプロの存在意義っていうのは、アマチュアとは違うわけじゃん。だからこそ、ちゃんとしたステージで戦うっていうのがおれの理想だけどね。 そうじゃないとアマチュアとプロの境目がなくて…… なんかだるくなっちゃう。
SS:(笑)。でもそれがリアルだよな。
MH:追求してるものが違うのかな。日本のコンペシーンと。だから、フリーサーフィンの世界っていうのはサーフィンの本質があって、スタイルが見せられておもしろいと思うよ。

<つづく>

POSTED : 2025-02-26