PLAYERS : EMA KAWAKAMI
河上 恵蒔
EMA KAWAKAMI
Xゲームズ千葉2024
Part 3
Xゲームズ※1ジャパン本番直後のエマと父・竜平にインタビューを決行。エマの急激な進化、急展開の裏側を聞いた。
※1 さまざまなエクストリームスポーツを集めた世界最大級の競技大会。夏と冬の年2回開催される。
文:高橋 淳
写真、動画:ペドロ・ゴメス
SOUND OF SUNRISE(以下、SOS):念願の Xゲームズジャパンに出場しました。結果は10位。今の気持ちは?
エマ(以下、E):初めて出ることができてうれしかった。でも乗りたかったルーティンが乗れなかったので、くやしさもあります。だけど、いつも画像や映像で見ていた選手たちと滑ることができてよかったです。
SOS:どんな作戦だったんですか?
E:最近練習でメイクできた、900※2をやってからのステイル(フォッシュ)ロデオ※3っていうルーティンを狙いました。ちょっとだけ合わなくて乗れなかった。
SOS:気になったスケーターは?
E:いちばんすごかったのはギー・クーリー。あとトム・シャー、(エドアルド)ダメストイとJD(サンチェス)がやばかったです。おれももっと練習をして技をいっぱい増やして、その技をルーティンに入れて高さも上げるようにしないといけないなと思いました。
※2 空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転半させるトリック。
※3 空中で体とボードを一緒に背中側へ1回転半させながら、後ろの手でボードを掴むトリック。
SOS:今日のエマくんを見て、竜平さんはどんなことを感じましたか?
R:すごくチャレンジしていましたね。念願の日本でのXゲームズ参戦ということで、「今までやってきたことと違うことをやりたい」とエマは言っていました。今回のXゲームズ千葉は、イタリアの大会の1週間後。そこで急遽チャレンジを決めて、よく攻めたなと思いました。
SOS:ここ最近、エマくんは海外の大会にたくさん出場しています。自分のなかでどんな変化がありましたか?
E:習ってない英語なのに、街の人たちが言ってることを覚えて、それを言えるようになりました。
SOS:竜平さんから見て、スケートボードに関してはどうでしょうか?
R:大会はそれぞれバーチカルの形状が違うので、その場その場で合わせていかないといけない。スケールの大きい大会に出るようになって、いろんなバーチカルを滑ることで経験を積んで、強くなってきたのかなって思います。
SOS:エマくんの活躍は最近たくさんのメディアで報道されています。まわりの反応はどうですか?
E:学校の友だちとか保育園のときの友だちからは「すごい!」っていうか、「よくこんなまわれるな」と驚かれることが多いです。
SOS:注目されるようになって、親として気をつけていることはなんですか?
R:スケートボードをするときはボロボロのシャツを着がちなんですけど、練習でも「ちゃんとした格好させとこう」と思うようになりました。けっきょくすぐボロボロになっちゃうんですけどね。
SOS:エマくんは、勉強についてはどう考えていますか?
E:頭がよくなりたいというより、みんなについていけたらいいなって思ってます。
SOS:スケートボードのほかに興味があることは?
E:スケボー以外では、サッカーにいちばん興味あります。
SOS:竜平さんはエマくんにサッカーをやらせたかったそうですね。
R:はい。僕がずっとやってきたので、子どもにもサッカーをやってもらいたい気持ちはありました。サッカーのキックはスケートボードに通じる部分もあるので、今もやってくれたらうれしいです。
SOS:エマくんの教育についてはどう考えていますか?
R:自分が学校で困らないようにだけしてくれればいい。とはいえ、勉強できるような環境はキープしてあげたいです。英語は学んでほしいですね。海外の大会に行ったときに必要になってくるので。
E:英語をしゃべれるようになったら、海外のスケーターに「ヤバいね」とか「一緒にどっか行こう」とか言える。あとは海外の人がおれを褒めてくれていることも聞きとれるし、出会った人たちともっと仲よくなれるから、英語は勉強してぜったいに話せるようになりたいです。
SOS:最近とくにうれしかったできごとは?
E:ソルトレイクのバートアラートとベンチュラのXゲームズ。バートアラートでは初めての海外の試合で決勝に上がれて、トニー・ホークの前で900を3回連続できた。ベンチュラは初めて戦ったXゲームズで、海外のすごい人たちと一緒に滑れたことがうれしくて、楽しかった。
SOS:トニー・ホークとどんな会話をしましたか?
E:3連続900のことを話して、ラストに“Amazing ! ”って言ってくれた。ぜったいにこれは褒めてくれてるなってわかりました。
SOS:夢のような話ですね!
E:うん。いっぱい夢を叶えられたらうれしいし、もっと楽しいことがある。もっと海外に行って、どんどん夢を叶えたいです。
写真:河上 竜平
SOS:エマくんが注目されたきっかけについてお聞かせください。
R:トニー・ホークがXゲームズで900を成功させてから今年で25周年記念。それがターニングポイントだったと思います。ESPNから僕のところに「25周年記念の動画を制作するので、エマの900の動画も使っていいか?」というメッセージが来たんです。もちろん「ぜひ」と答えました。そうしたら「アメリカに来てもらったら撮影できるんだけど、アメリカに来る用事ある?」って聞かれた。でもそんな用事はまったくないので「ないです」って返事をしたら「じゃあバートアラートに出るのか?」とさらに聞かれた。出るも何も、タンパという試合を勝ち上がらないと出場できない。だから「いや、予定はないです。タンパも出てないです」と答えたら、「バートアラートの運営に聞いてみる」って言ってくれたんです。そこからちょっと日が空いて、バートアラートの1週間前にふたたび連絡があった。なんと、ワイルドカード4枠のうちのひとつにエマを入れてくれたんですよ。そこからいっきに今にいたる流れになりました。
SOS:でも、実績がなければまず連絡が来ないですよね。
R: 7歳のときに初めて900を成功させたときに、オリンピックやESPNなどのSNSで「最年少でメイクじゃないか!」とシェアしていただいて。それから2年ほど経ってちょうど25周年と被って、連絡が来たという展開ですね。
SOS:そばで見ていて、エマくんのどんな点がすごいと思いますか?
R:当時のエマは900を1日か2日で成功させたんですけど、今みたいなクオリティにするまで1年くらいかかった。その1年間、900に対して努力しつづけたエマの忍耐力というか、メンタルがすごい。コケたり痛いことも何度もあったけれど、ずっとやりつづけてきた。1回乗れたとしても、だいたいみんなそれでやめるんです。
SOS:エマくんに質問です。なんでXゲームズに出場できたと思いますか?
E:ちっちゃいころからずっとXゲームズを観てて「ぜったいにこのバーチを滑ってみたい、高いところからグーンと降りてみたい」ってずっと思ってました。いつかそれをやるために、スピードに慣れたり、技を増やしていった。ほかの大会に出ても、順位は関係なかった。Xゲームズに出てみたかっただけやから。そうやって少しずつ進化して、バートアラートに出ていい成績が取れたから、Xゲームズに出られた。
SOS:スケートボードをするうえで意識してることは?
E:最年少で技を決めること。最年少でやれば、その分メイク率も早く上がるし、ルーティンにも早く入れやすくなるから。今まで最年少でいろんな技をメイクしてきたから、うまくなれてるのかなと思う。
R:たしかに「最年少」ということに懸ける思いは見ていて大きいです。もっと小さいときから「540※4を最年少で乗りたい」と言っていました。エマのなかで表彰状やメダルみたいな言葉なんだと思います。
E:最年少記録を達成したら有名になって、いろんな人に知ってもらえる。それで最年少が格好いいと思って、ずっとやってきました。●
※4 空中で体とボードを一緒にお腹側へ1回転半させるトリック。
POSTED : 2024-12-13