2024 S/S NOTHING FROM NOTHING

ビリー・プレストンの歌う「Nothing From Nothing」のピースフルなメロディに心を打たれたのは、ある種の天啓のようなものだったのかもしれない。
「何もないところに何もしなければ、何も生まれない」——ポップで甘い曲調とは裏腹のシリアスで強烈な歌詞に触発された神谷の頭に去来したのは、ブランドとして次のステージ、すなわちファッションショーに挑戦してみたいという衝動だった。
自分で着たい服なのかどうか、服を作るときには常に想像するという創作の根底には、いかにリアリティをもってストリートで消化できる服であるかという意識が流れている。
そのリアリティの源泉=青春時代を過ごした街でもある大阪を久しぶりに訪れた彼は、さまざまな古着屋で無意識に化繊素材の服を多く手に取る自身の姿を発見し、そのムードを創作に投影しようと考えた。

ポリエステルとナイロンの混紡素材を二浴染めして自然に近い色落ち感を追求したブルゾンやカーゴパンツ、あるいはベーキングによって生じた凹凸が一見するとパイソンレザーのようなシャツなど、生っぽい表情の化繊素材をアメカジのスタイルに敷衍。
激しいダメージやブリーチ加工を施したカットソーやダック地のワークジャケット、ペインターパンツ、脇のリブやボクシーなシルエットがリバースウィーブを想起させるコットンニットなどにも、アメ村の古着屋をルーツとする神谷のオリジンが息づく。
FULLCOUNTとダブルネームの再構築のデニムジャケットや、blackmeansとダブルネームのクラック加工ライダースジャケットなど、共鳴するブランドとのコラボレーションにより、デザイナーの肖像はさらに鮮明な輪郭を獲得した。